2018年8月31日の第十三期全人代において、個人所得税法の第7回改定が公布し、そして、2019年1月1日より施行されています。
駐在員・中国人従業員ともに影響が生じることが見込まれており、納税額の変化を含め、改定の影響を正しく把握することが必要となります。
弊社のwebsiteでは、個人所得税に関連する規定の全訳を掲載して参りますので、どうぞご参考下さい。
中華人民共和国個人所得税法(2019年改正)
1980年9月10日第五期全国人民代表大会第3回会議において審議通過。1993年10月31日第八期全国人民代表大会常務委員会第4回会議において「『中華人民共和国個人所得税法』の改定の決定」にて初回改定。1999年8月30日第九期全国人民代表大会常務委員会第11回会議において「『中華人民共和国個人所得税法』の改定に決定」にて第2回改定。2005年10月27日第十期全国人民代表大会常務委員会第十八回会議において「『中華人民共和国個人所得税法』の改定の決定」にて第3回改定。2007年6月29日第十期全国人民代表大会常務委員会第二十八回会議において「『中華人民共和国個人所得税法』の改定の決定」にて第4回修正。2007年12月29日第十期全国人民代表大会常務委員会第31回会議において「『中華人民共和国個人所得税法』の改定の決定」にて第5回改定。2011年6月30日第十一期全国人民代表大会常務委員会第21回会議において「『中華人民共和国個人所得税法』の改定の決定」にて第6回改定。2018年8月31日第十三期全国人民代表大会常務委員会第5回会議において「『中華人民共和国個人所得税法』の改定の決定」にて第7回改定。
第一条
中国国内において住所を有する、又は住所を有しないが一納税年度内において中国国内に累計183日以上居住する個人は居住者個人という。居住者個人が中国国内及び国外より取得した所得は本法に基づき個人所得税を納付する。
中国国内において住所を有せず且つ居住しない、又は住所を有せず且つ一納税年度内において中国国内に滞在する日数が累計183日未満の個人は非居住者個人という。非居住者個人が中国国内より取得した所得は本法に基づき個人所得税を納付する。
納税年度は新暦1月1日から12月31日までである。
第二条
下記の各個人所得は、個人所得税を納付しなければならない。
(一)賃金・給与所得
(二)労務報酬所得
(三)原稿料報酬所得
(四)ライセンス使用料所得
(五)経営所得(財税注解:個人の企業事業単位に対する請負・借受事業所得及び自営業者所得を含む)
(六)受取利息・配当金・特別配当金所得
(七)資産賃貸所得
(八)資産譲渡所得
(九)一時所得
居住者個人が上記(一)~(四)の所得(以下「総合所得」という)を取得した場合、一納税年度を単位とし個人所得税を計算する。非居住者個人が上記(一)~(四)の所得を取得した場合は、月又は回数を単位として個人所得税を計算する。納税者が上記(五)~(九)の所得を取得した場合は本法に基づき個別に個人所得税を計算する。
第三条
個人所得税の税率
(一)総合所得は3%~45%の超過累進税率を適用する(税率表は末尾に添付)
(二)経営所得は5%~35%の超過累進税率を適用する(税率表は末尾に添付)
(三)受取利息・配当金・特別配当金所得、資産賃貸所得、資産譲渡所得及び一時所得は比例税率を適用し、その税率は20%である。
第四条
下記の各個人所得は個人所得税を免除する。
(一)省級人民政府・国務院部委及び中国人民解放軍以上の単位・及び外国組織、国際組織より支給された科学・教育・技術・文化・衛生・体育・環境保護等方面の賞金
(二)国債及び国家が発行した金融債券利息
(三)国家の一律規定に基づき支給した手当・補助金
(四)福利費・弔慰金・援助金
(五)保険賠償金
(六)軍人の転職金・復員金・退役金
(七)国家の一律規定に基づき幹部・職員に支給した支度金・退職金・基本養老金又は定年金・定年補助金
(八)関連法律の規定に基づき免税すべきである各国の駐中国大使館・領事館の外交代表・領事館官僚及びその他の者の所得
(九)中国政府が参加した国際公約、締結した協議において規定された免税所得
(十)国務院が規定するその他免税所得
上記(十)の免税規定は国務院より全国人民代表大会常務委員会へ届出される。
第五条
以下の状況のいずれか一つに該当する場合、個人所得税を減額することが可能である。具体的な範囲と期限は省・自治区・直轄市の人民政府の規定により、同等の人民代表大会常務委員会への届出が必要である。
一、身体障害者・子女のない高齢者・烈士遺族の所得
二、自然災害により重大な損失を受けた場合
国務院は他の減税を規定することが可能であるが、全国人民代表大会常務委員会への届出が必要である。
第六条
課税所得の計算
(一)居住者個人の総合所得は、一納税年度の収入額から6万元の基礎控除及び特別控除項目・追加控除項目と法により確定したその他の控除を減算した残高を課税所得とする。
(二) 非居住者個人の賃金・給与所得は、毎月の収入額から5,000元の費用を控除した残高を課税所得とする。労務報酬所得・原稿料報酬所得・ライセンス使用料所得は毎回の収入額を課税所得とする。
(三) 経営所得は、一納税年度の収入額から原価・費用及び損失を控除した後の残高を課税所得とする。
(四) 資産賃貸所得は、毎回の収入が4,000元未満の場合、費用800元を控除する。4,000元以上の場合、費用として20%を減額した後の残高を課税所得とする。
(五) 資産譲渡所得は、資産譲渡による収入額より資産取得価額と合理的な費用を控除した後の残高を課税所得とする。
(六) 受取利息・配当金・特別配当金所得、一時所得及びその他の所得は、毎回の収入額を課税所得とする。
労務報酬所得、原稿料報酬所得、ライセンス使用料所得は費用として20%を減額した後の残高を課税所得とする。うち、原稿料報酬は課税所得の70%で計算する。
個人の所得を教育・貧困援助・危機救済等の公益慈善事業に寄付する場合、寄付額のうち課税所得の30%を超えない部分を課税所得から控除することができる。国務院による公益慈善事業寄付に対する全額控除の規定がある場合はその規定に従う。
本条第一款第一項に規定された特別控除には居住納税人の国家規定範囲及び基準により納付した基本養老保険・基本医療保険・失業保険等の社会保険費と住宅積立金等を含む。追加控除項目は子女教育費・継続教育費・高額医療費・住宅ローン利息又は住宅賃料・高齢者扶養支出等を含む。具体的な範囲・基準及び実施順位は国務院が確定し、全国人民代表大会常務委員会に届出する。
第七条
居住者個人が中国国外で取得した所得について、その課税額から国外で納付した個人所得税額を控除することができる。但し、控除額は当該納税者の中国国外所得に係る本法規定に基づいて計算した課税額を超えてはならない。
第八条
以下の状況のいずれか一つに該当する場合、税務機関は合理的な方法により納税調整する権利を持つ。
(一)個人とその関連者との業務が独立取引原則に合致しないことにより、本人又はその関連者の課税額が減少され、且つ正当な理由がない場合。
(二)居住者個人が制御する、又は居住者個人と居住者企業が共に制御する税金実質負担率が明らかに低い国(地域)で設立した企業で、合理的経営実態がなく、居住者個人に帰属する利益を分配しない、又は分配を減少した場合。
(三)個人がその他の合理的な商業目的を有さず、不当な税収利益を取得する場合。
税務機関が前款の規定により納税調整を行い、税金を追加徴収する場合、当該税金の徴収のほか、法に基づく利息を加算しなければならない。
第九条
個人所得税は所得者を納税義務者とし、所得を支払う単位又は個人を源泉徴収義務者とする。
中国の国民身分証明書番号を有する納税人は、中国の国民身分証明書番号を納税者の納税人識別番号とし、中国の国民身分証明書番号を有しない納税人は、税務機関よりその納税人識別番号が与えられる。源泉徴収義務者の税金源泉徴収時には、納税人は源泉徴収義務者に納税人識別番号を提供しなければならない。
第十条
次の各号のいずれかに該当する場合、納税人は法律に従い納税申告を行わなければならない。
(一)総合所得を取得して確定申告をする場合
(二)課税所得を取得したが源泉徴収義務者が無い場合
(三)課税所得を取得したが源泉徴収義務者が税金を納付しない場合
(四)国外より所得を取得した場合
(五)国外へ移居する為、中国戸籍を抹消する場合
(六)非居住者個人が中国国内にて二カ所以上より賃金・給与所得を取得した場合
(七)国務院が規定するその他状況
源泉徴収義務者は国家規定に基き全員の全額を申告しなければならず、且つ納税人に個人所得及び納付済み等の情報を提出しなければならない。
第十一条
居住者個人が取得した総合所得について、年度ごとに個人所得税を計算しなければならない。源泉徴収義務者が存在する場合、源泉徴収義務者が毎月、又は毎回ごとに税金を予納し、確定申告を行う場合、所得取得の翌年の3月1日から6月30日までの間に確定申告を行わなければならない。予納弁法は国務院税務主管部門が制定する。
居住者個人が源泉徴収義務者に特別・追加控除情報を提出する場合、源泉徴収義務者は毎月の税金予納時には規定通りに控除しなければならず、拒否することはできない。
非居住者個人が取得した賃金・給与所得、労務報酬所得、原稿料報酬所得及びライセンス使用費所得について、源泉徴収義務者が存在する場合、源泉徴収義務者が毎月又は毎回ごとに税金を納付し、確定申告は行わない。
第十二条
納税人が取得した経営所得については年度ごとに個人所得税を計算する。納税人は毎月又は四半期終了後15日以内に税務局へ納税申告表を提出し税金を予納し、取得した翌年の3月31日までに確定申告を行う。
納税人が取得した受取利息・配当金・特別利益配当、資産賃貸所得、資産譲渡所得及び一時所得について、源泉徴収義務者が存在する場合、源泉徴収義務者が毎月又は毎回ごとに税金を納付する。
第十三条
納税人が取得した課税所得について、源泉徴収義務者が存在しない場合、取得した翌月の15日までに税務機関へ納税申告表を提出し税金を納付しなければならない。
源泉徴収義務者が納税人の税金を納付しない場合、納税人が取得した翌年の6月30日までに税金を納付しなければならず、税務局が納税期限を通知した場合、期限内に税金を納付しなければならない。
居住者個人が取得した国外所得について、取得した翌年の3月1日から6月30日の間に税金を申告納付しなければならない。
非居住者個人が中国国内にて二カ所以上より賃金・給与所得を取得した場合、取得した翌月の15日までに申告納付しなければならない。
納税人が国外へ移民する為、中国国籍を抹消した場合、中国国籍を抹消する前に税金清算をしなければならない。
第十四条
源泉徴収義務者は毎月又は毎回の源泉徴収した税金を翌月の15日までに国庫に納入し、個人所得税申告表を税務機関へ提出しなければならない。
納税人が確定申告を行い税金の還付を受ける場合、又は源泉徴収義務者が納税人の為に確定申告を行い税金の還付を受ける場合は、税務機関の審査後、国庫管理の関連規定に従い税金還付手続きが行われる。
第十五条
公安・人民銀行・金融監督管理等の関連部門は税務機関に協力し、納税人の身分や金融口座情報などを確認しなければならない。教育・衛生・医療保障・人民政府・人力資源社会保障局
・住宅都市農村建設・公安・人民銀行・金融監督管理等の関連部門は、税務機関に納税人の子女教育・継続教育・医療・住宅ローン利息・住宅賃料・両親介護等の特別税金免除に関する情報を提供しなければならない。
個人が不動産を譲渡した場合、税務機関は不動産登録などの関連情報に基づき納付すべき個人所得税を検証しなければならない。登録機関が移転登録を行う場合は当該不動産譲渡に関する個人所得税の納税証明を検証しなければならない。また、個人が株式譲渡による変更登録を行う場合に市場の登録機関は、当該株式取引に関連する個人所得税の納税証明を検証しなければならない。
関連部門は納税人及び源泉徴収義務者の当該法律への遵守についての情報を信用情報システムに入力し、協力して激励または懲戒を実施する。
第十六条
各所得の計算は人民元を単位とする。所得が人民元以外の通貨である場合、人民元為替レートの仲値で換算した人民元に基づき計算した税金を納付する。
第十七条
源泉徴収義務者に対し、源泉徴収した税金の2%を手数料として支払う。
第十八条
預金利息に関する個人所得税の徴収開始・削減・停止等の具体的な弁法は、国務院により決定し、全国人民代表大会常務委員会に届出する。
第十九条
納税人・源泉徴収義務者・税務機関及び従業員が本法の規定に違反した場合、「中華人民共和国税収徴収管理法」及び関連法律法規に従い責任を追及する。
第二十条
個人所得税の徴収管理は、本法及び「中華人民共和国税収管理法」の規定に従い実行する。
第二十一条
国務院は本法に基づいて実施条例を制定する。
第二十二条
本法は公布日より施行する。
個人所得税税率表一(総合所得適用)
等級
|
年度個人課税所得額
|
税率(%)
|
速算控除額(元)
|
1
|
36,000元以下
|
3
|
0
|
2
|
36,000元超 144,000元以下
|
10
|
2,520
|
3
|
144,000元超 300,000元以下
|
20
|
16,920
|
4
|
300,000元超 420,000元以下
|
25
|
31,920
|
5
|
420,000元超 660,000元以下
|
30
|
52,920
|
6
|
660,000元超 960,000元以下
|
35
|
85,920
|
7
|
960,000元超
|
45
|
181,920
|
注1:本表の年度個人課税所得額は本法第六条の規定に基づき、居住者個人が取得した一納税年度の総合所得より基礎控除額6万元・特別控除・追加控除及びその他の控除等を控除した残額である
注2:非居住者が賃金・給与、労務報酬所得、原稿報酬所得、ライセンス使用費を取得した場合、上記の個人所得税税率表に従い月割で換算し納税額を計算する
個人所得税税率表二(経営所得適用)
等級
|
年度個人課税所得額
|
税率(%)
|
速算控除数(元)
|
1
|
30,000元以下
|
5
|
0
|
2
|
30,000元超 90,000元以下
|
10
|
1,500
|
3
|
90,000元超 300,000元以下
|
20
|
10,500
|
4
|
300,000元超 500,000元以下
|
30
|
40,500
|
5
|
500,000元超
|
35
|
65,500
|
注:当表で表示した年度個人課税所得額とは、本法第六条の規定に基づき、一納税年度の収入総額より原価・費用及び損失を控除した後の残高である